350人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「急に帰ってきて仕事はどうした」
「ちゃんと滞りなく終わりました。会長の所に行って挨拶してから自宅に戻ってきただけです」
「そうか。ご苦労だったな」
「あの、それだけですか?」
「は?なんだ、それだけって」
「組長は俺のパートナーですよね」
「それがどうした」
「お帰りのハグとかチューとかないんですか」
「あるわけねぇだろ、バカか」
「なんだよ。それくらいあってもいいじゃんか」
「誰に口をきいてる」
「俺のマイ・ハニーと話してます」
「お前、この状況でまだ言うか」
「ダメですか?俺はこんなにお預け喰らってすごく悶々としてるんですけど」
「・・・・恥ずかしいことをポンポン言いやがって・・・お前は外で発散してるだろうが」
「えっ?発散?」
「・・・いや、なんでもない」
「聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ」
「俺、なんか嫌われるようなことしました?」
「は?何言って・・・」
「俺、避けられてるよね」
「・・・・・・・・・・・」
「俺を遠くの仕事に出したり、俺が帰ってくるときに組長は外に出たりして・・・そんなに俺に会うのが嫌?もしかして離婚も考えてるとか」
「何言ってる・・・・お前はそうしたいのか?」
「桂斗がそう思ってるか聞いてんだよ!」
「ここで名前で呼ぶな!」
「ちゃんと答えてくれないから・・・・ 俺いろいろ考えちゃって」
「お前がしたいならいいぞ」
「は?」
「その代わり極道から足を洗え」
「桂斗はそこまで考えてるの?」
「名前で呼ぶなと言ってる」
「俺は貴方の気持ちが知りたいんだ!」
「お前が別れたいなら別れてやる」
「俺の気持ちじゃなくて・・・・」
するとドアの向こうから七生の声がした。
「若っ!」
「・・・・・・・七生が呼んでいる。もう次の仕事に行け」
「・・・・・・俺は桂斗の気持ちが知りたいんだ」
弟に背を向けた躰を引き寄せて胸ぐらを掴んで引き寄せた。無理やり・・・・そう・・・・またやってしまった。無理やり唇を奪った。
理玖を拒絶するような態度を見せるのに、唇は甘く柔らかく理玖を迎え入れる。
どうして言葉や態度と裏腹にこんなに官能的なキスをするんだ。
躰の芯が熱くなるのを感じる。一気に沸点を超えるような高揚感に包まれる。
彼の手が優しく胸を押し返してきたので自然に体が離れた。
「七生が呼んでいる。行け」
「桂斗・・・・・一度時間を作ってほしい。話がしたい」
「早くいけ」
理玖は兄の躰から離れて七生の所に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!