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「こんな・・・・俺はこんなんじゃいけない」
桂斗は組長室に鍵をかけて絨毯の上に崩れ落ちた。
弟の声を近くで聞いただけで、彼の匂いたつ色香に躰が燃えるように熱くなるのを一人耐える。
「俺にとってアイツの存在がこんなに大きくなっていたなんて・・・・」
少し離れようと思ったことが彼への思慕を膨らませようとは思ってもみなかった。
見るたびに男ぶりが上がる。それは自分によってではない、他の誰かのせいではないのか?こんな嫉妬心に苛まれるのは自分のプライドが許さないのに、そんな厄介な感情に振り回される自分が情けない。
嫉妬・・・・?理玖にか?
いや、そうでない見たことのない誰か。理玖を取り巻く数多の女たちにどうしようもなく嫉妬する。
「情けない・・・・雷門の組長として・・・・」
ソファに座りなおして深呼吸して空を仰いだ。
「酒でも飲みたい気分だ」
ここで酒を飲んで逃げても仕方ないことは重々わかっていた。
「組長」
外で恭介の声がした。
「ああ、入れ」
「組長、大丈夫ですか?」
「何がだ」
「私たちにくらいは貴方の心の内を吐露してもいいんですよ。すべて内に収めるのは辛い事です。私たちは命に代えても貴方を裏切ることはありませんから」
「わかっている。お前たちは心配しなくていい」
あくまでも組長の顔を崩さずに気持ちを収めた。
恭介と真一はそんな組長を痛々しく感じ、改めて彼のために動こうと誓うのだった。
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