350人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
会長・雷文虎太郎は戸籍上の父だ。
パートナーの組長・雷文桂斗と会長は本当の親子だが、理玖とは血のつながりはない。
桂斗と理玖も本当は兄弟ではなく、従弟同志という間柄だ。桂斗の母・愛美と理玖の母・千奈美は姉妹にあたる。
そして・・・桂斗の元のパートナー・佐竹は理玖の本当の父というオマケ付きの事実もある。
なんという運命の悪戯だろう。今も桂斗の心の中に住み続ける男が実の父親だなんて・・・考えただけで腹が立つ。
それだけ前世からの縁が深いのだと理玖は勝手に解釈することにしている。そうじゃないとこんな奇妙な自分の身の上を消化しきれないのだ。
「会長は今、雪兎さんの会社にいるようですね」
「じゃあ銀座か」
「向かいますか?」
「ああ、行こうかな。雪兎さんにもお土産買ってきたし」
昨日、インドネシアから戻ってきた理玖は、組のみんなに土産を買ってきていた。
「ではご機嫌伺いに・・・銀座に向かうとしますか」
七生はすぐに車を首都高に向けた。脇のヒロは銀座の駿河屋に電話をかける。
銀座・駿河屋は高級呉服店。
その会社を切り盛りしているのは、雷門虎太郎のパートナー、雷門雪兎だ。
雷門組の男嫁はもう2代続いている。雪兎は初代男嫁だ。
組長のパートナー=《イコール》嫁なので、どっちがタチかネコか・・・と言うことではなく、この原理から言うと、嫁は理玖ということになる。
「嫁としちゃあ、実家への挨拶は欠かせないっしょ」
「礼節を心得たできた嫁ですよね~、若は・・・」
「そうだろ~。そんな嫁放ったらかすと浮気しちゃうからぁ?」
「してるじゃないですか!」
「は?してねぇし・・・」
「だってインドネシアの大統領夫人と・・・」
「あれは仕事!」
交渉事をまとめるために情を交わすのは至ってまともな策のひとつだ。
「若はモテますよね~。その気を見せなくても女が寄ってくるし」
「ヒトはミテクレに弱いからね~」
「暗に顔自慢ですか?」
「いや・・・そういう訳じゃないんだけど。だってさぁ極道なだけで普通嫌だよね。それに薄情で性格悪いし。それでもいいなんて近づいて来る女は、オレの上っ面だけ気に入ったってことじゃん」
「あらら、低評価ですね」
最初のコメントを投稿しよう!