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彼の瞳が大きく見開かれた。
一瞬、甘くとろける色が浮かんだように見えたが、確認する前に伏せられた。
それきり何も言わず、ただ嗚咽を漏らすだけの彼を、俺は奥歯を食いしばりながら穿った。
嗚咽を喘ぎに変えるために、懸命に穿つ。
楔を打ち込むように。
この人をこの世界に留めたい。
どれだけ辛かっただろう。
どれだけ自分を呪ってきただろう。
どれだけの夜に震え、朝日に絶望してきただろう。
それでも、
生きていてくれて、ありがとう。
俺と出会ってくれて、ありがとう。
「愛しています……!」
「う……あぁぁ……っ……!」
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