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頭のねじが外れてるとしか思えない発言に、俺の脳は数秒フリーズした。 「……は?」 「あ、間違った、メイドか」 「……どういう間違え方ですか。というかメイドって……もしかして家政婦になれって言ってるんですか?」 「おう。ただしボランティアでな」 タダで飯作れってことか。 吉野は偉そうに続けた。 「食材費は出す。仕事があるだろうから週末だけでいいぞ」 こんなふざけた命令聞く義理はない。 ……しかし、頭のねじが外れているのは俺も同じだったらしい。 この人に毎週会えるのか……。 俺は、吉野に強い興味を抱いていた。 あれほど素晴らしい作品を作る男がどういう人間なのか知りたかった。 ここまで誰かに関心を持ったのは生まれて初めてだ。 男に毎週会いたいなんて、自分がいかれている自覚はあったが、好奇心には勝てなかった。 「……わかりました。メイドでもボランティアでも任せてください」 「なら、これ渡しておく」 「え……」 手のひらに乗せられた鍵をぽかんと見る。 「これ……もしかして、この家の鍵ですか?」 「ああ。俺が外出しているときは勝手に入ってろ」 「いいんですか? 会ったばかりの人間にこんなもの渡して」 「この通り盗まれて困る物は何も無いし、家に帰ったときに飯ができてるほうがいいからな」 あくまで飯優先らしい。だがまあいい。 合鍵……。 硬くてひんやりした感触のそれを、確かめるように握り込んだ。
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