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案の定、俺は翌週も吉野の家の前にいた。
「吉野さん、佐尾です」
呼び掛けるが応答はない。
撮影にでも出掛けてるのかな?
時刻は午後一時。夕食の準備には早すぎる。家の中で彼の作品を観ながら待たせてもらおうと思い、合鍵で家に入った。
ひっそりした空間に人気は無いように思えたが、一応声をかける。
「吉野さん、いらっしゃいますか?」
「こっち」
小さな声が聞こえた。
いたのか。
お邪魔しますと言って上がり、声のした方へ行く。吉野は縁側にいた。やわらかな陽光を浴びてゴロンと横になっている。
「お昼寝中でしたか。起こしてしまってすみません」
「すまないと思うなら、添い寝しろ」
「は?」
またしても言葉のチョイスが奇怪だ。
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