第一章 とびっきりの糞野郎がファンタジー入り

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 しかし、異世界で初めて出会う相手がニワトリ頭のムキムキマッチョマンって、なんの罰ゲームなのだろうか?  というか美少女は? 異世界ファンタジーといえば美少女ヒロインと出会っていちゃこらしながら問題解決するのが定番だろ? 美少女が来ないと俺のファンタジー始まらないんだけど。 「あ……玉切れ」  その時、草原のど真ん中で、パチンコ台から「ビーンビーン」と無い玉を弾こうとする情けない音が響き渡る。どうやら玉が切れたらしい。  というより、何でパチンコ台まで一緒に異世界に来てんの?  ラノベ大好き俺ことセイジ君が知りうる異世界召還といえば、『元々特別な力を持っていて、その力を少しずつ開花すると共にその異世界での問題を解決する人』、『何の才能もないが何故か選ばれてしまって命を懸けて戦うことになるが、そいつしか装備できないなんかすごいアイテムがもらえる人』、『才能もアイテムもないけど選ばれる代わりに超有能な美少女がヒロインとして登場する人』の三択。  だが、俺は才能もないごく一般的な大学生で、今のところ美少女も出現していない。冴えない青年とパチンコ台があるだけ、解説してくれるようなキャラも出てこない。  誰なのこんな無責任で適当な召還したやつ。いやマジで誰なの? 呼び出すだけ呼び出してノーヒントでしかも何も与えず放置って……え? もしかして俺に与えられたアイテムってまさかこのパチンコ台と今俺が座ってる椅子だけ?  確かに、電気が供給されてないのにこのCRガチムチ番長5は稼働している。不思議さで言うならファンタジーのアイテムっぽいと言えばアイテムっぽい。  でもだから何って話。  そして気付けば前方にいたニワトリ頭のムキムキマッチョマンの数が一体から十三体くらいに増えている件について。  音もなく増えんなよ、怖すぎるだろう。 「ん? こっちに近付いてきてる気が……するぞぉ?」  きっと、この状況をモニター越しに見れたのならば超愉快な気分なのだろう。最近流行のVRで体験出来たらきっと最高のエンターテイメントになったはずだ。でも当事者の気持ちもたまには考えてあげて欲しいんだ。  鶏頭のムキムキマッチョマンがじりじりとにじり寄ってくる恐怖を知っているだろうか? 俺は今知ったんだが、信じられないくらい怖い。
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