第三章 汚い大人が成り上がる、この世界で

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 俺が作らないとまともな食事にもありつけなかったため、もうこれは仕方がないとしか言いようがない。今までどうやって過ごしていたのか聞きたいくらいだ。  そんなわけで、現在俺とヒロシは戦わない代わりに大量の食材と調理器具の入ったでかいリュックサックを背負っている。それなりに重いので、引き籠りには結構辛い。  だがこれでへばっているようでは、この世界で生き残るのは難しいと諦め、まだモンスターを何とかしてくれる仲間がいるだけマシだと切り替えて、文句の一つも言わずに運んでいた。  多分、俺の人生の中で今が一番頑張っていると思う。 「ところでセイジ、とりあえず王都に向かってるはいいけど……俺たちはどうするんだ?」 「ああ……俺たちも兵士になるかどうかって話か?」 「それそれ、あの本に書かれてるバッドエンドをなんとかしようと思ったら、兵士にならないとどうしようもないだろ? そもそもお姫様のいるお城の中にも入れないらしいからな」  ヒロシの言葉通り、城内は不審な輩が侵入しないように、正規に雇用した関係者以外は立ち入り禁止になっているらしい。俺の知ってるRPGのゲームだと、出入りほぼ自由のガバガバ警備だというのに……まあゲームがおかしいんだけど。 「でも城の兵士を募集してるのって強い奴だけなんだろ? 俺たちじゃ絶対無理じゃん? ここはおとなしくレイチェルとセナとサトウチに頑張ってもらうしかなくね? 他に兵士になる方法もないしさ」 「城の中に入りたいのなら、モンスター使いになるという選択もあるぞ?」 「モンスター使い? なんそれ?」  そこで、話を聞いていたサトウチが、どうしても俺たちにも働かせようと、城内に入るための抜け道を教えてきた。喋らないで、知りたくない。楽したい。
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