第三章 汚い大人が成り上がる、この世界で

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 覗き込むように俺はその人物に語りかける。すると、ロン毛の男性は振り返ってその顔を見せた。そして、容姿が明らかになる。  糸のように細い目が特徴で、どこか女の子にモテそうな可愛らしい顔をしたその男は、紛れもなく、俺も、ヒロシも知っている男だった。 「え? マジっすか? せ、先輩?」  井上いのうえ 隆二りゅうじ、俺が通っていた高校の後輩で、絶対に部活に入らなければいけないルールのある高校だったため、俺とヒロシが暇潰し目的で所属していた漫画研究会に所属していた後輩でもある。 「おいおい! 何で井上がここにいるんだよ!」  井上の姿を目にして、ヒロシも席を立ちあがって目を見開く。 「いや! それこっちの台詞っすよ! どうしてこんなところに先輩たちがいるんすか?」 「まあ俺とヒロシがここにいるくらいだし、井上がここに居ても変ではないんじゃね? あれでしょ? シズカちゃんとかいう糞女神って俺たちのこと適当に召喚してるんでしょ?」 「そうだとしてもできすぎな偶然でしょう? え、うわー! マジっすか? え? 二人はいつからここにいるんですか?」  ずっと一人で行動していたのか、井上はほぼ見えない目を輝かせて嬉しそうに俺たち手を握ってきた。めっちゃジメッとしてる。 「えーっと……誰?」  突然立ち上がって感動の再開する俺たちについていけず、レイチェルが俺の背中をトントンと叩いてそう呟いた。 「うぇ? 誰っすか、この美人?」 「え! び、美人? 本当? いやー……私も実は最近そうじゃないかって思ってたんだよね」  井上の率直な言葉をぶつけられて、レイチェルはまんざらでもない緩んだ顔を見せる。気をつけろ井上、中身はお花畑だゾ。 ――――――――――――――――――――――――――――  それからとりあえず、どういった経緯を辿ってきたのか俺たちと井上で情報を交換し合った。井上は運よくこの王都付近に召喚されたらしく、ここ二ヶ月間くらいずっとダラダラと情報を集めながら、日雇いのバイトを探して過ごしていたらしい。  この世界に来たタイミングは、どうやら俺たちとそんなに差はないとのこと。
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