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死後結婚
私の父が経営する町工場にNという男が住み込みで働いている。
Nは超が付くほどの田舎出身である。人口は100人を割り込んでいるらしい。教えてもらった村の名前をネットで検索しても情報はヒットしない。地図で探してみたが、未だ見つけることができないのだ。
信じられないことに、Nは私の住む町に移り住むまで、携帯電話を使ったことがなかった。村に電波が届かないからだ。
そんな隔絶された世界から飛び出してきたNには忌まわしい過去があった。
ある飲み会の席でのこと。
「正月とかは村に戻るの?」私は軽い気持ちで訊ねた。年齢が近いこともあり、私はいつもタメ口だった。
「絶対に戻らないよ」Nは顔を硬直させながら否定した。
「なんで?」
「あの村は狂っているんだ・・・・・・」
「狂っている?」
「うん。死後結婚って聞いたことある?」
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