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その日以来、Mの親族は合法的な殺人方法を模索してきたのだという。生き残れたとしても刑務所に入ったんじゃ意味がないということだろう。
ある者は刑務官になって死刑執行の瞬間を待ち望み、ある者は医療従事者になって生命維持装置を外す瞬間を待った。堕胎をするために猛勉強して産婦人科医になった者もいるというから驚きだ。しかし今も生き残っているのは産婦人科医だけらしい。他の2人は失敗に終わった。
「お前は誰かを殺したの? 今39才だろ」私は声を震わせた。
「いやまだ何もしていない。このまま順調に行けば、人を殺さないで40才を超えた最初の男になるかもしれない」
「最初の男を狙ってるわけ?」
「狙ってるも何も、人なんて簡単に殺せるものじゃないだろ。ズルズル39才になってしまっただけだ。30代半ばまでは諦めていたんだ。いつ死んでもいいと。でも・・・・・・どうせここまで来たら、なんとかして生き延びてやろうって最近は思い始めてる」Mはそう言うとニヤリと私の顔を見ていた。
「悪いけど力になれそうにないわ」
私は店を飛び出して、駆け足で家路についた。その後、Mがどうなったかは分からないままだ。
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