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翌日会社に行くと、H部長は右手の薬指に包帯を巻いていた。子供とキャッチボールをしているときに突き指をしたという。
私がK氏に視線を送ると、彼は無表情のままウィンクをしていた。
昼休みになるとK氏は私をランチに誘った。断る理由はなく、むしろこっちから誘うつもりでいた。
「驚きましたか?」K氏は指を怪我しているため、左手だけで食べられるハンバーガーを注文していた。
「小便漏らしそうだったよ」
「信じてくれましたか?」
「・・・・・・ああ」
それから数十秒間、私たちは無言で食事をしていたが、K氏が先にその静寂を破った。
「実はですね、65才になる僕の父が、そろそろ道連れを実行するんですよ」K氏は嬉しそうに話していた。
「人を殺すってこと?」私は声をひそめた。
「そうです。晴れの舞台ですよ。依頼金は3億円です」
「マジ!? 政治家でも殺すのか?」
「それはまだ言えません」
「父親が死ぬのに悲しくないのか?」
「悲しくないと言ったら嘘になります。でも我が家は今、3億を何に使おうかという話で持ちきりです」
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