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入る時も出る時も、警備員のひとに社員証を見せないといけないのでいつも手間取るが、待たせるのもいけないと思い、手に持って出てから、キョロキョロっと周りを見ると、普通に壁に持たれていた。
「すいません、待ちましたよね?」
「いや、女子社員は着替えがあるだろ?だから少し遅めに出たんだ」
そう言いつつも腕を組んだままだったので、寒かったんだろうと、ポケットに入れていたホッカイロを渡す。
「お、サンキュー!」
「どこに行くんですか?」
「安田さん、肉好き?」
「はい」
「ホルモン食える?」
「あ、すっごく好きです」
「じゃあ、こっち。はぐれないでね」
そう言いながら、仕事用の靴よりは低いがヒールなのをわかってくれているのか、ゆっくりと歩いてくれる。
「先輩、ここってどこですか?駅からは近いけど……」
「真裏だよ?一本出たら大通りだからそんなに奥まった場所ではないかな」
「ここは来たことなくって」
「だろうね。若い子は反対側に行くから。ここはおじさんのたまり場。と言っても、俺も部長に教えてもらったんだけど」
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