新入社員とタルトタタン

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「はーあ。このままだと今週の契約ゼロだよ。」 昼休み、喫煙室。 草太はタバコの煙を吹き出すと、ぼやいた。 「仕方ないって、ここのとこどこも不景気だしさ。」 草太の同期であり契約数一位のエース社員、長内が草太を慰める。  喫煙者でもないのに喫煙室に来て悩みを聞いてくれる彼は、草太にとって大切な相談相手だった。 「そんなこと言ったってさぁ、長内は今週もめっちゃ契約取れてるじゃん。やっぱ交渉力の差だよ。」 愚痴を吐いてもどうにもならないが、吐かずにはいられない。 「まあ大丈夫大丈夫。足りなそうなら俺の仕事回すし、というか手伝ってくれるとほんと助かる。」  「ほんと、悪いな。いつもお前に頼りっぱなしで。」 「気にすんな、俺も草太にいっつも助けられてるんだからさ!あ、そろそろ行くわ、仕事終わったら飲みに行こうぜ。」 「ああ、店決めとくよ。。」 頼むわー。と手を振ると、長内は喫煙室の扉を閉めた。 入社して二年、今だ彼の名前を呼ぶのには慣れない。 ずっとこっちは名字、向こうは名前でよびあっている。
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