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その頃陸攻は、水切り爆撃の有効性を改めて堀尾のバカ面に突き付けた手柄を誇るわけでもなく、青山分隊士そして鳥松と共に新しい爆撃照準器の取り付け作業兼照準調整に大忙しである。
その名も神戸本線式照準器。
ラバウルの中攻乗り有志からホンマさんと呼ばれている茂田松人社長…
茂田1等軍属が、サイパン島経由の飛行艇でわざわざ届けてくれたのだ。
試作品の評価試験という口実、いや名目で。
しかも陸攻が喜びそうな名前までつけて。
勿論件の試作照準器には、茂田科学工作舎の銘板が誇らしげに輝いている。
「どうだいクマさん、何が見える?」
「中田のあっちゃん。
虎屋の羊羮を手荒く持ってるぞ。
しかも、こっちに向かってる」
「おいおい、真面目にやってくれ。
ベラ公のババアも一緒じゃないか…
トリ、あとちょい左に頼む」
「了解なんだな。
…手紙でユリネちゃんに言っちゃうんだな」
「トリさんしどい…」
こんなやり取りを重ねつつも、3人は仕事の手を些かも緩めない。
ちなみに中田のあっちゃんとは、ラバウルの海軍病院に勤務する新人の従軍看護婦である。
本名は中田麻美(なかた=あさみ)。
成田智大尉と同じく千葉県の出身で、陸攻曰くラバウルの花だそうである。
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