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正座してジッと暫く待つ。
シーンとした部屋。
今日この日の為に用意したワンピース。
汚れたって良かったから、着いて行った方が良かったかなと考える。
部屋を見渡すと、壁には賞状がズラリと額に入って飾られてあった。
広の名前のものもある。
その賞状の額と並んで、私が昔撮影したおじいちゃんの写真も並べられてあった。
私は、立ち上がってそれを近くで見ようと近付く。
間違いない。
私が9年前におじいちゃんにプレゼントした写真だ。
捨てられずに…大事に"夏木煙火株式会社"の歴史に並んでいた。
嬉しかった。
縁側の方に移動して、外を眺める。
庭の先にある道。
この道の先の坂を下って行けば、工場があるはずだ。
私はやっぱり行こうと玄関に戻って靴を履いて玄関を出る。
さっきの庭の方に向かい、その先の坂道を下る。
途中、プレハブの建物が並ぶ。
どこかに居るかもと広の姿を探す。
暫く坂を下り、探しながらゆっくり歩いていると―
「どちら様?」
男の人の声がして振り返る。
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