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プレハブの建物から年配の男性が1人出てきていた。
「ここは関係者以外立ち入り禁止だ」
そう言われて説明しなければと思う。
「あの…私―」
説明しようとすると、同じ建物から2人の年配の女性が出てきた。
「あれ、迷いこんだの?」
1人の年配の女性が私に問い掛ける。
「ちょっと待って、あなた昔―」
もう一人の女性が私を指差す。
「お前知ってるんか?」
「知ってるも何も、忘れたの?10年くらい前の―」
三人でコソコソ話して、こちらに向けられた目は歓迎されていないとすぐに察した。
「今さら何しに来たの?」
「アンタに罪はないが、アンタはここに来ていい立場じゃない。ここの家族が無茶苦茶になったのはアンタの母親のせいなんよ?」
「早く出ていきなさい」
口々に言われて、何も言えなくなってしまう。
現実を突き付けられている。
でも、逃げるわけにはいかない。
広との未来を取ったのだから。
意を決した時だった―
「寄って集って、若い子いじめるな」
そう後ろから声がした。
その聞き覚えのある声に振り返る。
そこに立っていたのは、広のおじいちゃんだった。
「社長」
おじいちゃんの姿を見て、3人は静かになった。
広のおじいちゃんは、9年前より少し老けてしまっていたけれど、その立ち姿や存在感はかわりなかった。
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