エピローグ

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ーー数年後…… 車を実家の前にとめて、雪掻きしたばかりの玄関までの道を小走りで走り、私は玄関の扉を開ける。 「こんにちは!」 声を掛けたけど、誰も返事がない。 ブーツを脱いでいると、部屋の奥で賑やかに笑う声が聞こえた。 雪を払って家に入り、廊下を歩いて居間へ行く。 引き戸を開けると暖かい部屋で、父が娘の光(ひかる)を背中に乗せて炬燵の周りを馬になりきって歩いていた。 私の姿を目にしたとたん、父から満面の笑みが消える。 光は父から飛び降りて、私に抱きつきにきた。 「ママ、お仕事終わったの?」 「うん、終わったよ。おじいちゃんに遊んで貰って良かったね」 「うん、お馬さんの前はね、一緒にお姫様ごっこしたのよ」 無邪気に話す娘の後ろで、父は何も言わずにお茶の用意をする。 お姫様ごっこの詳細を聞きたい気分だけど、私は触れずに良かったねと光に微笑んだ。 「ちょっと休憩して行け」 湯気の上がる湯呑みを炬燵のテーブルの上に用意してくれた。 「ありがとう」 上着を脱いで横に置き、私は湯呑みが置かれたテーブルの前に座る。 炬燵が冷えた足の先を温めてくれる。 「光ちゃん、おやつにおみかん食べるか?」 「うん!」 私には滅多に見せない優しく微笑みながら話す父の顔。 光は父に差し出されたみかんを器用に剥いていく。
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