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「ただいま」
と、声を上げて光は自宅の扉を開けた。
まだおじいちゃんは帰っていない様子だ。
「ママ、パパのところに行きたい」
「ダメよ。工場は火薬が沢山あるから、危ないの。それにお仕事の邪魔になる」
「えぇ~。危なくないもん。邪魔しないもん」
ぷうっと頬を膨らませて拗ねる光。
玄関の上がり部分に、宅配便の箱が置かれていた。
誰からかと見ようとした時、玄関の扉が開く。
「源おじちゃん!」
光が嬉しそうに声を上げた。
「満ちゃん、手伝って。今、デイサービスの車から帰って来た」
源さんがそう言って、扉を足で止めながら杖をついたおじいちゃんを片手で支えて連れてきてくれた。
「あっ、おかえりなさい!」
私は慌てて源さんから代わっておじいちゃんを支える。
「大じぃじ、おかえりぃ」
光や私に、ただいまとおじいちゃんは笑顔を向けてくれた。
おじいちゃんは、光が生まれる前に手術を受けてくれて、今も病と闘いながら私達の側で見守ってくれている。
「あぁ、満ちゃん、私が代わるから!」
通りかかった従業員のおばさんが私に代わっておじいちゃんを支え上げてくれる。
身重の私を気遣ってくれた。
「大じぃじ、一緒にお部屋に行こう」
光に手を引かれて、源さんの介助を受けながら奥へと入って行く。
「無理したらいかんよ。大事な身体なんだから」
そう声を掛けてくれた。
嫁いですぐはぎこちなかった従業員との関係も、今はすっかり馴染んだ。
源さんが中心になって、私を受け入れてくれたのが、もう5年くらい前になる。
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