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おじいちゃんの部屋を出て、私は光の足跡を辿る。
途中、事務所に立ち寄った形跡がある。
中を覗くと、数名の従業員が工場の方を指差して笑った。
「お邪魔してすみません」
私がそう言うと、
「姿を見るだけで目じりが下がるよ」
「お父さんの仕事が気になって仕方ないんだなぁ」
口々に話してくれた。
私は足跡を辿って工場へ行く。
扉が少しだけ開いたままになっていた。
そっと中を覗く。
光は、作業している広の姿を工場の端でじっと見ていた。
「ママに内緒で来たのか?」
「…うん」
「心配するからダメだろ?」
「だって、行くって言ったらダメって…」
「火薬があるからだよ」
「大丈夫だもん」
光はその場にしゃがんで座る。
広はその姿を見て微笑む。
「もうすぐ終わるから、一緒に家に戻ろう」
広がそう話すと光は頷く。
光は広の花火を作る姿が好きらしい。
ずっと見ていられるようだ。
「光、寒いからちゃんと扉閉めて」
広が言う。
「うん!あっ、ママ」
見つかってしまった。
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