5555人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
それは、町発足100周年記念行事のチラシだった。
「ここ、100周年なの?」
どうやら今年の9月30日で、町が100周年を迎えるらしい。
「そうなんだよ!もう町上げてのお祭り行事だからさ。これ終わるまでは絶対に居る」
そう言えば、彼はお祭り男だった。
高校の文化祭も、文化祭実行委員長を務めていた。
「好きだね、お祭り」
「そう。でも、役場主導での記念行事だから俺が関われるのはここだけ」
竜ちゃんがチラシを指差す。
そこには…
"フィナーレ 夜空に満開の桜が咲く"
"若き後継者渾身の打上花火"
と書かれていた。
「広の花火が上がるんだ」
竜ちゃんが誇らしげに言った。
「これが成功したら、アイツは本当に一人前の花火職人だ」
広と会わなかった9年間、
彼は直向きに夢を追っていたことがわかった。
9年の歳月で、私には何もなかった。
無くしてしまった。
恥ずかしかった。
最初のコメントを投稿しよう!