9 打ち上げ花火

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―父に単車を借りて家を出る。 役場までの道程は、今まで見たことのない賑わいを見せていた。 県外ナンバーの車が路に連なっている。 美織の言う通り、単車で出て正解だ。 打上花火が綺麗に見える場所は、人が集まっていた。 みんなが夜空を眺めていた。 終わったと思っていた打上花火がまた上がり、歓声が上がる。 私はその中を潜り抜けるように単車で役場まで向かう。 100周年の記念行事は、大々的に告知がされていたようだ。 今年最後の夏の花火を見ようと、遠くから人が来ているのを肌で感じる。 役場に近付くとまた一段と人で賑わっていて、グラウンドには沢山の人が集まっているのが遠目にもわかる。 そして微かに聞こえてくる音は、近づくにつれて、音楽だと認識する。 メイン会場近くになると、その音楽があの曲だと確信する。 クラムのHANABI。 役場の臨時駐輪場にバイクを止めて、ヘルメットを脱いでバイクに収納する。 打上花火の光が私を照らす。 漏れ聞こえてくるあの曲がピッタリと重なるような打上花火に、まさかと思いながら、それに引き寄せられる。 私は人の間をすり抜けてグラウンドへ急ぐ。 もしかして― そう思いながら、夜空を見上げるとやっぱりそうだった。 ミュージックスターマイン。 音楽と打上花火の共演。 音楽に合わせたようにピッタリと上がる打上花火は、1つのドラマを見ているような感覚。 広がしたいと言っていた未来。 それを私は見上げて見ていた。 ずっと忘れられないあの曲と一緒に。
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