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涙目な私に、美織は眉間にシワを寄せる。
「泣くくらいなら初めからするなよ」
美織の言ってることに間違いはない。
「ごめん……。滅茶苦茶勝手なこと言うけど、見捨てられたかと思った…」
私の言葉に、テーブルにのっているビールジョッキに手を伸ばし、豪快に半分ほど飲んだ美織。
「見捨てたりしないよ」
その言葉にまた目の奥が熱くなる。
「今日はお説教だよ。全部吐いて貰うからね」
一人が寂しくて、真木先生の手を掴んだ。
その手を掴んだことで、もっと孤独になるとは考えずに。
人を傷つけて、無傷なんて有り得ないのに。
美織に、ビールジョッキを取るように促される。
私はジョッキを持った。
「全部吐きなさいよ」
美織はそう言って、私の持つビールジョッキにジョッキを合わせる。
ジョッキがぶつかる音。
美織の呆れ顔の中の心配してくれてる表情。
周りのお客さんの声。
鼻の奥が痛くて、目の奥が熱くて、少しだけ涙が出たけど、私は払いのけて我慢した。
そして、真木先生の話を美織にした。
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