4 火花

5/18
4086人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
「お兄さん、優しいね。お嫁さんを気遣って…。飲んだくれてもおかしくない雰囲気なのに」 宴会をしてる部屋に戻る廊下で、私は言った。 「そうだね。でも、あの食事はお母さんが用意してるよ」 美織はそう言って笑った。 「平井一族はあたたかいね」 「うるさい一族だよ」 美織の家族が羨ましい。 宴会の場に戻ると、あちらこちらからお酒をすすめられた。 どこからかカラオケの機材まで出てきて、カラオケもはじまる。 「美織ちゃんも27歳だろ?結婚しないのか?」 親戚のおじさんが美織にからむ。 恐らく定番の質問なんだろう。 美織は聞こえないふりをして、カラオケを盛り上げようと大きめに手拍子する。 暫くして、さっきのおじさんが私を見て思い出したような顔をした。 「君は、役場の春川さんのお嬢さんか!」 相当酔っ払っているおじさんに指を差される。 「そうです」 「あぁ…どっかで見た顔だと思ってたんだよ」 おじさんはそう言いながら覚束無い感じで私のグラスにビールを注ぐ。 「君は、男と逃げたお母さんにそっくりで美人さんだよ」 その発言に周りの空気が変わる。 「東のおじさん!?」 美織がとんできた。 「春川さんは嫁に逃げられて、その噂がずっと付いて回って―」 「おじさん!!」 美織がおじさんを止めようとした時、美織のお母さんが私たちの間に入った。 美織のお母さんの手には、ぬか漬のお漬け物がのったお皿。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!