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「アイ……何年かぶりに会った気がするな」
「そう?」
アイは亡者を葬った手斧をくるくると回し、不満そうな顔をした。
彼女の後ろには大きな車両2台と武装兵たちがおり、どの顔にも面識はなかった。
「あんた、ごみを焼却処分したのはいいけど、こうやって亡者が来るから手順が滅茶苦茶になっちゃったじゃない」
「いいではありませんか」
大きな車両の運転席から老人が降りてきた。
「ご無事で何よりです、アリー様」
アマギリ教の教主だった。
サマというこの世界の最上級の敬称を使ったことで彼は困惑した。
「この人のグループ、装甲車なんて隠し持ってたの。ずるいでしょ?」
「申し訳ありません」
アマギリは頭を下げた。
「貴方様が哀れな女性たちを一人で救出しに行かれたと聞き、ここで何もしなければ地獄に落ちると確信致しました」
「そうか……」
「貴方様は本当に女性たちを救出なさった。やはりそういう御方なのですね?」
アマギリは泣き流しそうな顔だった。
彼はどうしたものかと思ったが、あわててアイたちの状況を確認する。
「なあ、コマリとサキは?アジトは無事なのか?」
「んー、なになに?」
「呼んだ?」
装甲車の後ろから二人が姿を現し、怪我もない様子に彼は涙をこらえた。
だが、キョウコやサクラコ、マリアまで出てくると自信がなくなってきた。
よかった。みんな無事だったのだ。
「二人とも強いって言ったでしょ。一箇所に固まってたごみに発砲して火炎瓶で退路塞いで終わり」
「超簡単だったよー」
「久しぶりにイケたわ」
かたや楽しそうな、かたやとろけそうな顔をした女性たちに彼はなんとか笑顔を作った。
「ああ、そうだ!この人たちを早く保護してくれ。寒いから何か着るものを」
「畏まりました!」
アマギリは彼女たちを丁重に車に誘導する。
彼はエリの妹を見て早く姉と会わせる必要があると思った。
「なあ、この子の姉さんが俺たちのアジトにいるんだ。できるだけ早く連れて行ってあげてくれ」
「お姉ちゃんと会えるんですか……?」
彼女は消え入りそうな声で聞いた。
「会いたいです……会いたい……」
「大丈夫。ちゃんと会えるから心配しないで」
アイがその子の頭をなでると堰を切ったように泣き出した。
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