第15章:いろんなことが終わった日

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アイは彼のほうをちらりと見た。 その表情に彼は違和感を覚えた。 「どうかしたか?」 「別に」 「ねーねー、あのビルすっごい燃えてるよー」 コマリが双眼鏡を見ながら言った。 「4階のベランダで誰かが手を振ってる。やっほー」 「あれ、煙で苦しんでるだけじゃないかなあ?」 キョウコもそれを見ながら首をかしげた。 彼はその男の顔を見たかったが、肉眼では厳しい。 「4階のどこだ?」 「一番端っこです。この寒いのに裸ですよ」 「裸!?変態ですね」 マリアが容赦なく言った。 「変態だよねー。あ、落ちた」 「落ちたの?あの高さじゃ即死ね」 「まあ、真下で見たかったわあ」 「サキちゃん、さすがに趣味悪いと思うなあ」 彼の目にも何かが落ちたのはわかった。 あの高さだと助からないのは病院の亡者落としで知っている。 彼は迷ったが言う事にした。 「あいつ、グループのリーダーだ。女の人たちがそう言ってた」 全員が彼を見た。 そして少し経つと笑い出した。 コマリが最も笑っていた。 「あはははは!それ、さいこー!あっ、おかしすぎて涙出てきた!」 彼女は大笑いし、本当に目から涙をこぼした。 「ふふふ、コマリちゃん、笑いすぎですよ」 「えー、マリアちゃんだって涙出てるじゃん」 「二人ともどうしたの?涙腺ゆるいわよ」 「サクラコ、そういうあなたも泣いてるわよ?キョウコ、あなたも。ふふふ」 「あれ?変だなあ……」 「え?あら、ほんとね。でも、そういうサキだって……」 初めは笑い涙だったがやがて笑いが消え、涙だけが出続けた。 彼女たちは泣いていた。 「みんな、よく頑張ったね」 アイだけが泣かずに言った。 無表情でアリーを見る。 「命と引き換えでもと思ってたのに、あんたのせいで復讐が台無し」 「ご、ごめんな」 彼はよくわからないが謝るしかなかった。 「でも、誰かが死ぬより良かったと思ってる」 「なにそれ?もっと真剣に謝りなさいよ。あんたのせいで皆泣いてるんだから」 「ごめんな……」 「真剣に謝って」 アイの怒りに彼は違和感を覚えた。 いつもと違って理不尽な怒りだ。確かに復讐を台無しにしたが、彼女も誰にも死んでほしくなかったし、人質も全員救出したかった。どちらも叶ったのにここまで怒るだろうか。理不尽というより壊れた自動人形が喋っているようで怖かった。
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