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「ごめんなさい……」
「あんた、本当に謝る気あるの!?」
「アイ、もういいのよ」
サクラコが泣きながら彼女を抱きしめた。
「もういいから。一緒に泣こうよ」
「……どうしたの、サクラコ?私を名前で呼ばないでよ」
「あれを見て。あのビル。燃えてるでしょ?やっと終わったの」
「終わった?」
「そう。もうリーダーしなくていいの。女の子に戻って」
「……え?」
「もう我慢しなくていいの。全部終わったから」
アイは燃え上がるビルを見た。
その目にオレンジ色の光が映る。
やがて光が頬にこぼれた。
「う……あ……ああああああ……」
アイは見たこともない顔で泣き始めた。
エリの妹を見た時の彼女に対する違和感の正体がやっと彼はわかった。
アイは泣きたかったのだ。
「なんであの子なの……わたしの妹は……誰も……誰も助けてくれなかったのに……なんであの子だけ……私の妹も助けてほしかったのに……」
アイはアリーの方を見て言った。
「助けてほしかった……あの子……両親が目の前で殺されて……心が壊れて……『お父さんとお母さんの所に行きたい』って私に……だから……私の手でああするしか……ああするしかなかったの……なんで私らは助けてくれなかったの?」
「ごめん……」
彼は謝るしかできなかった。
「あんたは不思議なことができるんでしょ?奇跡であの子を助けてよ……あの子をここへ連れてきて……お願い……なんでもするから……」
「俺には何もできない……許してくれ……」
「なんで……もっと早くこの街に来てくれてたら……あの子は……私らのお父さんとお母さんだってあんたがいたら……」
「そんなことを言ったらだめよ、アイ」
「だって……だって……あああああ……」
アイは泣き続けた。
サクラコも泣き、コマリもサキもマリアもキョウコもみんな泣いていた。
理屈からではない。失ったものは帰ってこない。
ただひたすらに悲しかった。
遠くで高い建物はオレンジ色の光を放って夜を照らし続け、星空に火の粉が上がっていった。その光は朝日が昇るまで消えることはなかった。
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