第3章:女グループ

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「こっちがスダジイって木の実でこっちはナラとかクヌギとか色々」 アイはざっくりと2つに分けている籠について説明した。 スダジイと呼ばれる木の実は全体の1割ほどだった。この世界の植物などまったく知らない彼だが、それらの実の形が違うことはわかった。施設内に生えてある木々から採集したのか、外に遠征したのかは不明だが大した量だった。 「道具はそこ。スダジイは殻を割ったら渋皮も剥いて籠に戻して。他のナラとかは殻を剥いたら荒くでいいから実を潰して籠に戻して。注意してほしいのはスダジイを絶対に他の実と混ぜないこと。殻は使い道ないから混ぜてもいいけど」 「こっちだけは何か特別なのか?」 「マテバシイとかスダジイってシイの仲間は実にほとんどアクがなくて処理が楽なの。他の実はつぶして1ヶ月くらい川に浸してアク抜きしないと食べられない」 「まずいよー。私も1回食べたことあるけど苦くて吐いたし。シイの実はいいよねー。そのまま食べられるから」 「生で食べるのは良くないんだけど……」 アイは奇妙なものを見るような目でコマリを見る。 彼はこのグループの食糧事情がどのくらいなのか気になったが、さきほど殺されかけたのでその質問をあきらめる。代わりに当たり障りのないことを聞くことにする。 「どうやって食べるのか聞いていいか?」 「粉にしたら小麦粉と同じような使い道よ。クッキーやパンにするの」 「ラーメンとかも作りたいけど、卵がないからねー。まあ、がんばってー」 「お昼になったら食事を運ぶから。トイレはそこの容器にして」 アイはそう言って彼の両手に巻かれた縄を解く。 そのとき、コマリが手をポケットに入れて戦闘に備えたのに彼は気づいた。 二人が出て行くと当然のように外から鍵をかけられた。 彼は部屋を少し観察する。 元から倉庫として使われていたらしく、彼には用途不明の道具がいくつも置かれている。壁の上部に備わった窓は採光だけの役目を果たし、大人どころか子供の体も通りそうにない。 「……今は大人しく従っておくか」 サボったら食事抜きくらいのバツは平気でやりそうなので彼は木の実割りを始めた。 直方体の硬い物体で木の実の殻を割り、表面の薄い皮を剥いで籠に戻すという単調な作業だ。右腕を一切使わないと時間がかかるので痛みが少ない動かし方を探ってゆく。 彼は思う。 今は辛抱のときだ。
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