第4章:処刑

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「ほら、思い出して。この顔」 アイは身をかがめて顔を近づける。 男は彼女を見たが何かを思い出した様子はない。 「リーダー、知ってる男だったんですか?」 マリアは驚いたように言う。 コマリも小さい声で「わーお」と言った。 「うん。むこうは覚えてないみたいだけど」 アイは近くにある木の枝を拾ってくると真ん中で折った。 男はろくでもないことをされると直感したのか、怯えた顔をした。 「ナイフ汚すの嫌だから」 アイはそう言うと男の顔に尖った部分を躊躇なく突き刺した。 これほどの体力が残っていたのかと誰もが驚く絶叫が生まれた。 「め、めが……やめ、やめてくれええええ」 「私たちもそう言ったはずなんだけど?」 アイは残った片目を見ながら笑う。 「すまないと思ってるのに私のこと覚えてないってどういうこと?記憶力悪すぎでしょ」 「あーあ、リーダーを怒らせちゃった」 「早く思い出したほうがいいですよ?」 3人の女性に囲まれながら男はのろのろと這って逃げようとした。 アリーはこの男と同じ最後だけは迎えたくないなと思いながら見物する。 「じゃあ、オツムが悪いあんたのためにヒントをあげるね。私には妹と両親がいたの。どう?思い出した?」 「うう……あああ……」 「日本語を喋りなよー。アリー君だって言えるのに」 コマリが男の背中に乗ってどすどすと踏みつける。 小柄といっても魔術中等学校に入れる体格なので痛いだろうなと彼は思う。 男は踏まれながらも必死に這い、花壇の横まで来た。 「まだ思い出さない?じゃあ、他のキーワードね。5人組。拳銃と斧。どう?」 「たすけて……いたい……たすけて……」 「本当に覚えてないようですよ?」 「これで人違いだったら大爆笑だねー。誤チェストでごわす、だ」 「ないない。私、記憶力いいから。拉致されてから相手をした21人全員覚えてるよ」 アイはうつぶせになった男の髪の毛をつかんで頭を上げさせ、残った枝を使った。 再びの絶叫。 「最後のヒント。妹を殺した姉」 「お……おまえは……ああああああ」 男は何かを思い出したらしい。 「やっと思い出した?」 「ゆ……ゆるし……」 「はいはい。じゃあ、ここを噛んどいて」 アイは花壇の一部であるレンガを男に噛ませた。 そして後頭部を全力で蹴りつける。 男の顎が砕け、声ではない声が生まれた。
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