第3章:女グループ

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第3章:女グループ

「面倒だからさくっと殺しちゃおうよ」 彼は朦朧とした意識の中で女の声を聞いた。 「駄目よ。せっかく薬使ったんだから労働力として使いましょう」 「無理無理。監視に人員割いたら元取れないって」 「男がいたら怖がる子多いよ?」 「それより奴隷は良くないんじゃない?あいつらと同じになっちゃう」 「治療の対価をもらうだけよ。こいつ何も持ってないし、働いて返してもらわなきゃ」 「どこのグループなんだろ?外人さんって初めて見るけど」 「遠くから来たのかも。他所がどうなってるか聞いてみたいです」 「日本語わかるかな?誰か英語しゃべれる?」 どれも女の声だった。 多くの声は若く10代か20代のものに聞こえた。 どうやら彼の処遇について議論されており、彼は声を出すべきか悩む。 むこうからすれば自分はいきなり居住区に侵入してきた不審者だ。 怪我の状態から見て人間に攻撃されたことは簡単に察せる。 悪人の可能性もあるので殺そうという人物に彼も逆の立場なら賛成しただろう。 彼は手足を何かで縛られているのに気づいた。 目隠しもされていたが、こちらは念力で位置を少しずらすことができた。 彼は周囲をそっと伺う。 部屋の窓には暗幕が張られ、奇妙な金属装置の中に青い炎が灯っている。 少し暖かいのはあれのおかげだろう。 その周囲に6人の女が座っていた。 「リーダー、どうする?」 「うーん、一度みんなに話を聞いてきて。こいつに被害にあった人がいたら殺すね」 リーダーと呼ばれた女は6人の中で若い方だ。 年功序列というわけではないらしい。 しかし、口調は軽いのに最も冷徹な目をしている。 あの悪漢の残忍さはないが、別の凄みがある。 「そうでなかったら1週間くらい働いてもらおうよ。その後は出て行ってもらう」 「監視はどうします?」 「監禁してシイの実を割る作業やってもらうのはどう?」 「あー、あれ面倒だもんね」 「シイの実全部食べちゃうんじゃない?」 「あれを生で食べるのはあんたくらいよ」 「殺したほうが面倒少ないと思うけど……」 「サキ、あんたは極端すぎるよ」 「あー、はいはい。リーダーが決めたなら従いますよ」 どうやら処刑は免れたらしい。 彼は安心し、睡魔に身を任せることにした。 こんな不審者を助けるなどどうかしてる。 だが、彼女たちに命を救われた事実は認めるしかなかった。
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