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「京都って奥が深いなあ。大学四年間で周りきれる気がしない」
「わかるわかる。大阪北部の人間やのに、来てみたら知らんことばっかりやったわ」
この付近を全てくまなく散策するのすら、一日くらいは要りそうだ。そんなことを考えていると、木々に囲まれて静かな通りに出た。岡崎通、平安神宮から一本逸れた道だ。木漏れ日がそよ風に歌う中、車がいくつか路駐され、近くからテニスのラリーの音が聞こえる。
ふと記憶の一点が刺激された。
「ここ、もしかして」
真希の尋ねる声を無視して、私は木々を見上げる。ここで間違いない。この前の夢の光景、つまり五月の日、中学校の修学旅行の時に迷い込んだ場所だ。
そのとき、私は班行動からはぐれてしまっていた。いや、正確には「はめられてしまった」「ハブられてしまった」。
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