翡翠に告げる物語

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 それならば敗北を知っている帝国軍にいるのではなく、連合国に助けを求めるべきなのは理解している。だがそれでは自分がここに来た意味を見失ってしまうのだ。  清良は何度目になるかわからない溜息を吐き、思考を止めて目を閉じた。  前日の夜から続く雨で川は増水し、風に煽られた倒れた樹木が街道を封鎖する、作戦を成功させるには『良い天気』であった。  夜の内に準備を済ませていたジェイダイトたちは朝陽が昇るより前に出発し、国境に近い村を襲撃した。警備の薄い村はあっと言う間に帝国軍の手に落ち、休む間もなく進軍を続ける。二つ目の村に到着した頃ようやく救世主率いる連合国軍が現れ、帝国軍との戦いが始まった。  とはいっても帝国軍が圧倒し、獣人の力を発揮する前に連合側は撤退をやむなくした。  尻尾を巻いて逃げる連合側に追い打ちをかけようとするジェイダイトに、気をよくした隊員ら剣を持って後に続こうとしたのには清良も焦った。連合側はもう戦う意思はないが、追えば仲間を守るために覚悟を決めた救世主が斬り捨てる。追いかけたところで無駄な労力を使うだけだ。  清良は剣を携えるジェイダイトの前に立ち、黙って首を振って否定した。  首元を掴まれ引き寄せられる苦しさに顔を歪めるが、目だけはけっして逸らさずジェイダイトを見続ける。 「俺はまだ暴れたりないんだが」     
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