翡翠に告げる物語

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 このような清良というイレギュラーが発生しても、物語通りに話が進んでいく。次の作戦も清良が言わなくともジェイダイトが気づいていたはずだ。本ではジェイダイトがもっと悪役らしく語っていたのを覚えている。  戻ってきた部屋は清良が初めて来た場所でジェイダイトの寝室だった。こちらに来て大半を過ごしたベッドに逆戻りし、清良はもぞりと布団の中で寝心地の良い場所を探す。 「僕にベッドを使わせていいの?」 「部屋を用意してほしいのならさせる」 「別に、いいや。ジェイダイトがいいならこのまま寝る」  掛布団を頭からかぶった清良は体を丸めて、ほう……と息を吐いた。洗い立てのシーツは陽の匂いがして気持ちがいい。ベッドはふかふかだし、きっと安眠できるだろう。  ――自分で言うのもなんだけど、図太いよな。  それもこれも、ここがジェイダイトの空間だからだろう。何も頼り者のいない世界へ一人で放り出され、奇しくも恋人によく似た男に保護された――保護させたとも言うが。  元の世界へ帰れるのかもまだわからない。もしものことを考えこの世界で行きていく術を身に着けなければならない。     
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