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エピローグ
腹の中が迫り上がる浮遊感の後、体を
包むぬくもりに目を開ければ顔を歪めた恋人がいた。
目の前で命を散らした男とだぶり、清良は昴の顔に触れ指で頬をなぞった。
「鱗がない。昴だ」
「清良っ!」
清良の名を呼び昴が端正な顔を歪める。今にも泣き出しそうで、安心させたくて頭を撫でれば箍が外れたみたいに荒く抱きしめられた。胸が圧迫れて苦しいのに、離れ難くて清良も昴の背に腕を回す。
まごう事なき恋人のぬくもりに清良はどうしてか涙が溢れてきた。
カーテンの外は明るく、時計は最後に見た日付から一日しか経っていない。
「僕は、夢を見ていたの?」
「夢だが現実でもある」
「どういうこと?」
「あ、無事に戻ってきたんだね」
答えに窮する恋人に代わって口を挟んできたのは、二度と会わないと思っていた昭彦だった。
「俺が説明しようか」
寝室の扉に凭れ明るく告げる昭彦に、曖昧だった思考が一気に覚醒した。同時にジェイダイトの最期が脳裏を過ぎり、歯が立たなくても一矢報いてやりたくて拳を握り締める。
「救世主!」
「清良、落ち着け。こいつは救世主だったが、俺たちには過去のことだ」
「過去? どういう意味?」
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