つづら折り

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 人は生まれてくる時に、人生のシナリオを受け取っていると、何かの本で読んだことがある。それ以上に印象に残っているのは、子供が親を選んで生まれてくる、というメッセージ。目に見えないことは信じ難いが、私が辿った道は、このどちらとも満たしている気がして仕方ない。長男が乳呑み子の頃「あと20年この子のために家庭を壊さず、母親として頑張らないと。それが私の使命、役割だ」という思いが漠然と浮かんだことをハッキリと覚えている。今思えば、現実になるとは、28歳の自分には考えも及ばなかった。あれは第六感だったのだろうか?キッカリ20年後に私は役目を終えることとなる。  人生の歯車が突然思わぬ回転を始めるとは、家族の誰ひとり予測出来なかったと思う。夫、長男、次男、そしてこの自分でさえ、まさかの変則回転に振り回された。発端は自分の病である。手術で患部を除去して、すっかり体は良くなったのに、夫の心ない態度に傷ついた。この代償は大きかった。夫は言葉で謝罪しない代わりに、家事を手伝うようになった。妻を喜ばせようと遠出の家族旅行も計画した。記念日に手頃なジュエリーをプレゼントし、満足そうだった。しかし、一旦狂い出した歯車は、それくらいのことでは動きを正常に戻すことは出来なかった。ひとつだけ手段はあった。心からの謝罪。頭を下げ「申し訳なかった。自分が悪かった。許してくれ。」と言うだけ。これが潤滑剤になると夫に迫ったが、拒否された。夫から受けた傷口がどれほど深いものだったか、それはその後の展開が物語る。  
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