第1章 本

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朝、カランカラン扉を鳴らして入ってきたのはすみえさんではなく、金剛駅の駐輪所のおっちゃんたちだ。今日は日曜日なのですみえさんは来ない。日曜日も出かける前にモーニングを食べに来てくれるお客さんが大勢いる。ランチも人気で、2メニューしかなく日替わりである。今日はAランチ「なすと鶏肉のがりぽん定食」Bランチ「ふわふっわオムライス」である。カランカランと扉が鳴り、女の人が入ってきた。休みの日にランチを食べにきてくれる地元のあおいちゃんだ。何度かしゃべった事があり、友だちとお茶にも着てくれる。今日は一人なようである。 「いらっしゃい」 「今日はAランチで、おいしそうですね。がりぽんってなんですか?」 「ありがとう、ガーリックとポン酢やねんけどいまからお出掛け?ガーリック大丈夫?」 「今日は何も予定がないのでAランチ、ガーリック食べちゃいます。」とあおいちゃんが笑った。Aランチは今日は大人気で完売したころ、あおいちゃんは食後の紅茶を飲みながら本を読んでいた。カランカラン扉がなり、謎の少年が入ってきた。今日は眠そうでなく、すっきりしている。椅子に座りながら青年が 「すいません、Aランチは完売ですか?」 「いらいしゃいませ。そうなんです。まだBランチは作れますよ。」 「じゃ、Bランチで」 とろっとろのオムライスを作り、私は今日のAランチの鶏肉の残りを少しオムライスに添えて青年に出した。 「あ、ありがとうございます。」 青年はオムライスと鶏肉を頬張り、食後のコーヒーと本と読んでいた。すると急に「ジャジャンジャーンジャジャンジャーン」とロッキーのテーマ曲が店に流れた。謎の青年は慌てて本を置き、電話を取りだした。 「え?今からですか?はい。分かりました。行きます」 と言いながら慌ててお金を払い、店を出て行った。謎の青年の後ろで本を読んでいたあおいちゃんは驚いたように青年が出て行く姿を見ていた。あおいちゃんが読んでいた本を鞄に直し、トイレへと立つ。青年の食べた食器を片付けに行くと椅子の下に本が落ちていた。拾って戻ってきたあおいちゃんにこれ違う?と渡す。金剛駅の水島書店のブックカバーである。 「あれ?鞄に入れたと思ったけどありがとうございます。」とあおいちゃんは本を鞄に入れ、お財布を出しごちそうさまを帰って行った。 その後Bランチも完売し、今日は大忙しの一日だった。
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