岸和田駅にて・・・

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 平成29年夏、その日の入道雲は、空の碧に、世界で一番高く、白銀にキラキラ輝いていた。  ツクツクボウシがうるさかった。  岸和田駅に降り立った私は、駅から商店街を見ながら、交差点の向こうの大きな入道雲を見ていた、その商店街のアーチ状の円い屋根にかかる銀色の雲は高く高く、大阪湾まで伸びていた。  南海電鉄、岸和田駅は平成4年に上り線、2年後に下り線が建て替えられて、新しい近代的な高架化の進んだ近代的なモダンな駅である。また岸和田はだんじり祭も有名であり約300年前、岸和田藩主・岡部長泰公が五穀豊穣を祈願して行った稲荷祭りがその始まりと伝えられている。駅前のロータリーも、だんじり名物『やり回し』といって、豪快にだんじりが駆け抜ける有名な場所である。  大阪の南の地域を泉の州と書いて『泉州』と言うが、岸和田は泉州の人にとって、だんじり祭り、また地域の中核都市として、ある意味、懐かしい場所なのである。 『あぁ・・・・岸和田に帰って来た・・・・』  駅からの眺めは懐かしかった。  この、ガヤガヤした風景が身に染みる。肌の細胞一つ一つがこの温暖な地の海の近い、夏の岸和田の風を感じていた。 結局、東京 で10年働いて、会社を辞め、付き合っていた彼氏とも別れ、この故郷岸和田に帰って来たのだ。 女30歳、アラサー女子なのだ。  さらに女ながら、食べること以外趣味のない70キロの巨体。  東京に憧れて、就職したけど、結局続かずに、故郷に帰って来た。  さて、これから、何して生きていこう?  ほんとに、何もない30歳アラサー女なのだ・・・・  駅前のロータリー、そして、私は途方に暮れた。  お腹空いたなー。  そういえば、南海難波駅から急行に 乗って出てから、何も食べていないのだ。 駅前で何か食べよう。    
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