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ふと、駅前商店街の古びた定食屋に入った。
『とんかつ定食一つ』
中から、御婆さんが一人出てきて
『悪いねー、今日はガシラの煮つけしかないのよ』
ガシラの煮つけ・・・悪くない。
ここらへんではカサゴの煮つけを、ガシラという、その異常に頭の大きなガシラという魚は、外見に似合わず、かなりの美味だった。
『ガシラの煮つけを、昼の定食なんて、豪華やねー』
顔をくしゃくしゃにした御婆さんが、ぽそっと言った
『実はね、私も年でねー、今月で、この店最後なのよ、腰も悪いしねー』
『フーン、もったいないよ・・・、これだけおいしいし、駅前なのに・・・』
『いやいや、もう充分よ』
顔をくしゃくしゃにして、御婆さんがほほ笑んでいた・・・・
店の窓からは、商店街の差し込む白銀の入道雲の夏の陽の照り返しがキラキラ輝いていた、ツクツクボウシの声はもう止んでいた・・・・・。
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