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大きな広間の奥に、大きな椅子があり、そこに王様が座っていた。
仕官が広間の入り口で立ち止まって、中に入れと合図をした。
ダバインは広間に入った所で片膝を付き、王様に向かって頭を下げた。それは、そうしろと、母に何度も言い聞かされたことだった。
王様が何か言った。
ダバインは遠すぎてよく聞き取れず、周りをきょろきょろと見まわした。
「もっと近くに来なさいと言っておられる」
ダバインの後ろに立っていた仕官が教えてくれた。
そこでダバインは王様のすぐ前まで歩いて行き、片膝を付いて頭を下げた。
「ダバインよ。立派になったな。面を上げよ」
ダバインは顔を上げて王様を見た。
「お前の父は立派な勇者だった。お前も父の跡を継ぎ、立派な勇者にならなければならぬ。覚悟はできておるか?」
「え? 急にそう言われても」
「お前に対する町の噂はこの耳にも入っておる。勇者とは心技体揃った者でなければならぬ。今のお前では無理なようだの」
「や、ちょっと待ってください。頑張ります。心を入れ替えて頑張りますから、勇者にしてください」
ダバインは手を付いて頭を下げた。
「生半可な気持ちで勇者になろうなどと考えると、父のように命を失うことになる。分かっておるか?」
「はい」
「勇者とは、王と同じように、その国を代表する人物と言っても過言ではない。勇者がみっともない真似をすれば、その国が笑われる。すなわち国の王である私が笑いものにされると同じことだ」
「わ、分かりました。ところで王様、父が亡くなってから、この国に勇者はいなかったのでしょ? ということは、勇者って必要あんの?って思うんですが」
「これ、口のきき方に気をつけなさい」
ダバインの後ろで、仕官が小声で注意をした。
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