第二章 王様

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 大きな広間の奥に、大きな椅子があり、そこに王様が座っていた。  仕官が広間の入り口で立ち止まって、中に入れと合図をした。  ダバインは広間に入った所で片膝を付き、王様に向かって頭を下げた。それは、そうしろと、母に何度も言い聞かされたことだった。  王様が何か言った。  ダバインは遠すぎてよく聞き取れず、周りをきょろきょろと見まわした。 「もっと近くに来なさいと言っておられる」  ダバインの後ろに立っていた仕官が教えてくれた。  そこでダバインは王様のすぐ前まで歩いて行き、片膝を付いて頭を下げた。 「ダバインよ。立派になったな。面を上げよ」  ダバインは顔を上げて王様を見た。 「お前の父は立派な勇者だった。お前も父の跡を継ぎ、立派な勇者にならなければならぬ。覚悟はできておるか?」 「え? 急にそう言われても」 「お前に対する町の噂はこの耳にも入っておる。勇者とは心技体揃った者でなければならぬ。今のお前では無理なようだの」 「や、ちょっと待ってください。頑張ります。心を入れ替えて頑張りますから、勇者にしてください」  ダバインは手を付いて頭を下げた。 「生半可な気持ちで勇者になろうなどと考えると、父のように命を失うことになる。分かっておるか?」 「はい」 「勇者とは、王と同じように、その国を代表する人物と言っても過言ではない。勇者がみっともない真似をすれば、その国が笑われる。すなわち国の王である私が笑いものにされると同じことだ」 「わ、分かりました。ところで王様、父が亡くなってから、この国に勇者はいなかったのでしょ? ということは、勇者って必要あんの?って思うんですが」 「これ、口のきき方に気をつけなさい」  ダバインの後ろで、仕官が小声で注意をした。
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