Y氏と古典的怪奇

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恐怖の夜から2ヶ月ほどたったことである。いつものようにY氏の妻がヒステリーを起こし、それをY氏がなだめるといった日常が起きていた。しかし、いつもと違ったのがY氏が妻のヒステリーを抑えた後、話題として出したのがあの恐怖の晩の出来事であったという一点だけであった。 最初は普通に聞き流していた妻であったが、話が女が出てくるところまで来ると話の調子に合わせて深くうなずき始めた。 「...ということがあってさ。」 Y氏の話が終わっても妻は同じリズムでうなずき続ける。 「いや、落ちはこれで終わりなんだけど...」 Y氏が声を掛けても妻はうなずきを止めない。それどころか、妻のうなずきは段々と酷くなっていく。もはやロックバンドが行うヘッドバンキングようだ。 「おいっ!」 Y氏は妻の様子がおかしいことに大声を出す。 妻は動きをピタリと止める。そして伏せていた顔を上げると、妻の顔があの女の顔になっていた。 「ひぃ」 Y氏はあの晩の恐怖が蘇り、立ちすくんでしまう。 「ツ...レテ...ク...」 女はそうつぶやくと、Y氏を無視して玄関から外に出て行った。 その背を見送ると、Y氏は腰が抜けてしまい、妻を追いかけることができなかった。 次の日、Y氏は妻が電車に飛び込んで自殺したことを知った。 あの話をしたから連れて行かれたんだ...俺のせいで。とY氏は深く後悔をした。 Y氏の妻の葬式が執り行われた。そこには当然、妻の両親も出席していた。     
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