Y氏と古典的怪奇

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Y氏と古典的怪奇

季節は秋。木々の紅葉が進んだこの山に分け入る男が一人。 Y氏は山歩きが趣味であった。 山歩きをしている間は、ヒステリックな妻や勤めている会社の上司から受けるパワハラを忘れられるからだ。 Y氏は半日ほど山を歩いて回ると、綺麗な小川を見つけた。 「よし、ここら辺でキャンプにするか。」 小川の近くの開けた場所を見つけると、Y氏は背負っていたリュックサックを下ろした。 てきぱきとテントを組み立てると、夕飯の準備に掛かる。 小川から水を汲み、ガスバーナーに火を点けて鍋を乗せる。 鍋には小川から汲んだ水を並々といれ、鞄からレトルトカレーを取り出してそのまま鍋に入れる。 飯ごうで炊いたご飯を皿に盛ると、湯煎で暖めたレトルトカレーを掛ける。 「おいしそうだ。」 Y氏は綺麗な空気と雄大な自然を堪能しながら、夕飯を食べ終えた。 夕食後に濃い紅茶を2杯ほどを楽しむと、テントに入って寝袋に包まる。 夜も深くなった頃、Y氏はバシャバシャという水音で目を覚ました。 動物でも来たか、とY氏は考えて音を立てないようにテントからそっと出る。 どうやら水音は近くの小川からしているらしい。     
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