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そう言いながら店主は腕時計を身につけると、それをいじり始める。
「おいおい...」
Y氏は店に入ったことを後悔し始めた。
「じゃあ、お客さん。いきますよぉ。」
そう言った瞬間、Y氏の目の前に居た店主が姿を消す。一瞬で姿を消したことに、Y氏は驚愕する。
3分後、店主が消えたときと同じように現れる。消える前と違うのは、店主が息を切らし、脂汗を浮かべていることであった。
「どうです?まだ信じられませんか?」
「いや...確かに不思議な時計だ。買うよ。」
「ありがとうございます。2万円になります。」
Y氏は財布からお金を出しつつ、店主に尋ねる。
「ところで...何でそんなに息を切らしているんだ?」
「これがこの時計の注意点でさぁ。こいつを使うと妙に疲れるんで、消える時間は30分ぐらいまでにしておいてくだせぇ。」
店主はY氏からお金を受け取ると、「またのごひいきに!」と愛想良く、Y氏を店から送り出した。
Y氏はそのまま家に帰ると、まだ起きていた妻が出迎えてくれた。
「おかえりなさい。」
「ああ、ただいま。」
スーツから部屋着に着替えたY氏は、早速あの不思議な腕時計を試してみることにした。
テレビ番組の右上に表示された時間を睨みつつ、その時間より5分進めてみた。一瞬、世界が暗転する。
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