プロローグ

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「死人に口なし」なんていうけれど、死人は案外おしゃべりだ。とわたしはしみじみ思う。 「おい、墓守女!墓の掃除なんてくだらないことでこの俺様をよびだすんじゃねーよ。」 今ボヤいている中年のおっさんのは元泥棒のディール、 「まあまあ、生きていたころの償いだと思って。」 と優しい諭すのはこの街にある兵士詰所の元団長クラウスさん。2人とも死人であるが、よくしゃべる。というよりしゃべりすぎて困る。教会の裏にある墓地で墓守をしているわたしは日課の墓地掃除を楽するために彼らを"呼び出した"のだが、全然進んでいない。 「ディールさん、愚痴ばっかり言ったらもう呼び出してあげませんよ。クラウスさんもディールさん放っておいていいですから掃除してください。」 「フン。しょーがねー、さっさと片付けてどっか遊びに行くか。」 悪態をつきながらもやっと掃除を始めてくれた。クラウスさんの方はディールさんが始めたのを見るや黙々と掃除を再開している。さすが元騎士団長頼りになります。わたしの方も掃除を再開しよう、なんせ墓地は広い、レーベンおじいちゃんはさぞ大変だったことだろうと今は亡き先代の墓守を労わりながら赤や黄色の落ち葉を箒で集め始めるのだった。
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