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トオルには、自分の部屋がありませんでした。
トオルは、ほかのプレゼントの人間たちと同じように、いつも屋敷にある共用大部屋を寝起きに使っていました。
クルミは、トオルを自分の部屋に呼んでいっしょに遊ぶことはありましたが、自分のものであるその部屋を、トオルと二人で使おうとは思いませんでした。
トオルには、自分専用の食料庫がありませんでした。
トオルは、他のプレゼントの人間たちと同じように、いつも屋敷にある共用食料庫の食料を食べていました。
共用食料庫は、子どもたちも普段の食事に使いますが、その中に入っているのは、栄養がきちんと計算されてはいるけれど、特別おいしいわけでもない料理ばかりです。
それは、サンタクロースからもらえるすばらしい味の食べ物や飲み物には、遠く及びません。
クルミは、年に一度しかもらえないおいしい食べ物や飲み物が減るのはいやなので、自分の食料庫に入っているものを、トオルに分けてあげようとは思いませんでした。
トオルは、自分の服を持っていませんでした。
トオルは、ほかのプレゼントの人間たちと同じように、いつも屋敷にある共用衣類を着ていました。
共用衣類は、どれもこれも地味な色で、柄の付いていない、変哲のないデザインのものばかりです。
トオルはかっこいいボーイフレンドなので、次のクリスマス・プレゼントには、もっとトオルに似合うすてきな服をもらって、それを着たトオルの姿を眺めて楽しむのもいいな、とクルミは思いました。
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