サンタクロース症候群

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屋敷の中は、どこもかしこも、いつでもプレゼントで溢れ返っていました。 おもちゃも、本も、ゲームも、お菓子も。 洋服も、時計も、靴も、鞄も。 タンスも、ベッドも、テーブルも、カーテンも。 それに、冷蔵庫や冷凍庫、乾燥食料庫の中に詰まっている食べ物に至るまで。 屋敷の中にあるものは、すべて、この屋敷に暮らす「子どもたち」に贈られた、プレゼントでした。 クリスマス・イブの夜に、サンタクロースが持ってくる、クリスマス・プレゼントだったのです。 屋敷に暮らす「子どもたち」の歳は、さまざまでした。 物心が付いたばかりの幼い子どももいれば、それよりいくらか年上の子どももいました。 すっかり背丈の伸びきった子どもも、目尻に皺ができ始めた子どもも、髪の毛に白髪がいっぱい混じっている子どももいました。 皺だらけで、背中と腰が曲がって、あと何年かもすれば寿命が尽きるだろう子どももいました。 彼らは、みんな「子ども」でした。 この時代では、年齢など関係なく、「子ども」は「子ども」と呼ばれていました。 この時代では、「大人」という種類の人間は、存在しませんでした。 この時代では、人間は、三種類に分別されました。 「子ども」と、「サンタクロース」と、「プレゼント」の、三種類です。
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