サンタクロース症候群

20/37
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
そうして、トオルがクルミのもとへやってきてから、五年の月日が経ちました。 トオルは、出会った頃よりずいぶん背も伸びて、大人びた顔立ちの少年になっていました。 けれど、その優しい声と笑顔と、ほんの少しの欲も持たないところは、出会った頃からまったく変わっていませんでした。 トオルは、クルミが持っているものを、分けてほしいなんて言いません。 クルミが持っているものを、こっそり使ったり、盗んだりするなんてこともありません。 クルミがどれだけたくさんのものをひとりじめにしていても、文句なんて一つも言いません。 そんなトオルといっしょにいるのは、クルミにとって、とても心地よいことのはずでした。 周りの子どもたちといっしょにいるときとは違って、トオルといっしょにいるときは、自分の持っているものを、クッキーのかけら一つだって取られる心配がありません。 自分が相手より良いものを持っていたり、相手が自分より良いものを持っていたりして、それが原因でケンカになることもありません。 だから、トオルといっしょなら、クルミは何一ついやな思いをすることなく、安心して、いつでも気分よくいられるはずでした。 それなのに、どうしたことでしょう。 一、二年前から、なんだか、そうではなくなってきてしまったのです。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!