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そうして、トオルがクルミのもとへやってきてから、五年の月日が経ちました。
トオルは、出会った頃よりずいぶん背も伸びて、大人びた顔立ちの少年になっていました。
けれど、その優しい声と笑顔と、ほんの少しの欲も持たないところは、出会った頃からまったく変わっていませんでした。
トオルは、クルミが持っているものを、分けてほしいなんて言いません。
クルミが持っているものを、こっそり使ったり、盗んだりするなんてこともありません。
クルミがどれだけたくさんのものをひとりじめにしていても、文句なんて一つも言いません。
そんなトオルといっしょにいるのは、クルミにとって、とても心地よいことのはずでした。
周りの子どもたちといっしょにいるときとは違って、トオルといっしょにいるときは、自分の持っているものを、クッキーのかけら一つだって取られる心配がありません。
自分が相手より良いものを持っていたり、相手が自分より良いものを持っていたりして、それが原因でケンカになることもありません。
だから、トオルといっしょなら、クルミは何一ついやな思いをすることなく、安心して、いつでも気分よくいられるはずでした。
それなのに、どうしたことでしょう。
一、二年前から、なんだか、そうではなくなってきてしまったのです。
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