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細い路地の中、ひっそりと、狭い空を仰ぎ見ている少年、『春』もその一人だ。
家族は居ない。親の顔も知らない。何処で生まれたのか、いつ生まれたのか。
春は自分の事について何も知らなかった。別に知りたいとも思わなかった。
日々、ゴミの中からマシなゴミを拾って食べ、必要な時は盗みを働き、最低限、雨風を凌げる場所で眠りにつく。
そんな生活を送っていた。
生きる意味は無いが、死にたいとも思わない。
この生活も気に入ってはいないが、嫌ってはいない。
ただ何となく、この街で、ある人に拾われ。そして、育ててもらった。
死んだら、その人に申し訳ないし。
あの人は、こんな場所でも必死に生きていた。
だから俺も、できる限り必死に生きていこうと。そう決めた。
あの人に育ててもらったこの場所で。
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