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俺は普段なら見ようともしない客席の方に目を凝らし、自分の番号が呼ばれるのを待った。 そうして待っていると、やはり一度だけ、落札できるわけのない金額の提示で、俺の番号を呼んでくる。 やはりいつもと同じ人物であろう声。 その声は、ここに来ているオヤジ達にしては若い印象が持てる声で、俺達みたいな子供を買って楽しんでいるような印象などは感じられないような雰囲気を感じられる声なのだ。 だが、そういう声質なだけで、きっと、ほかのオヤジ達となんら変わりはないんだろうと思っていた。 声の聞こえた方を見て正直驚いた。 オヤジ達の中に、一人だけ回りのオヤジ達よりは、はるかに若いであろう人物が一人立っていた。 すぐにそいつと目が合う。 あっちも驚いた顔をしている。 お互いに目は反らさない。 多分、俺の番号を呼んだのは、こいつで間違いないんだろう。 どういうつもりがあって、毎日俺番号を呼んでいるのか、俺には知る由もないが、聞けるものなら聞いてみたい気もする。 向こうから俺に近づこうとしてくれない限り、俺があいつの気持ちを聞くことなんて不可能なんだけど・・・ あんな若そうなやつが遊郭施設に入ってくればすぐに気が付くと思うんだが。 多分、あいつは、俺が知る限りでは、今まで一度も遊郭施設に来たことは無いはずだ。 多分今後も来るつもりはないだろうし、俺があいつの意図するところを理解出来る日はきっと来ないのだろうな。 そう思っていた。 でも、その日は意外と早くに訪れた。
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