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場所だけを言うなら、春は、誰にも干渉されないし、誰にも気を使わなくていいこの場所を、意外と気に入っていた。 学も無ければ、学ぶための金も無い。 正直何かを学びたいと思った事も無いし、かと言って、仕事も、学の無いこんな子供にはあるはずなかった。 だが、もともと集団行動なんてとんでもない、と思っている春にとっては、ここでの生活が自分には合っているし、自由気ままなこの生活を、むしろ好んでいた。 ただ最近、ただでさえ治安の悪いこのスラム街で、新たに、あまり良くない噂が広がっていた。 なんでも、人さらいが多発している、なんて話が、風の噂で、春の耳にも入ってきたのだ。 春のような、家族が居ない孤児や、年端も行かない子供達ばかりが被害にあっているらしいが、スラム街の子供が何人消えようが、さほど問題にもなりはしないし、大抵は気付きもされないのだろう。 子供の臓器は高く売れるらしいから、臓器売買の為にさらわれているのではないか。 なんて話もでているようだが、実際は、どんな身なりをしたやつが、なんの為に子供をさらっているのか誰も確実な事は知らない。 こんな街だ。臓器売買だかなんだか知らないが、さらわれたくなければ、自分の身は自分で守るしかない。 それはなにも人さらいに限った事ではない。 生きていく為に必要な物だって、自分の事は自分でやらないと誰も助けてはくれないのだから。
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