5

1/3
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ

5

今日も来たくもないオークション会場に行く。 証拠が無い事には、何も咎められない。 だいたい、根本的な話、うちの傘下のやつらが関わっていなければ、正直なところどうでもいい。 ここで、何人の子供達が涙を流そうと、俺には知った事ではない。 うちの傘下のやつらじゃない証拠が見つかればすぐに手を引く。 うちの傘下のやつらだった場合、さっさと消すまでだ。 うちの傘下のやつなのか、そうじゃないのか。 どちらでも構わない。 どちらかの決定的証拠がみつかればいい。 その為に今日もオークション会場へ足を運び。 後ろの方でオークションの様子をうかがう。 いつもと同じ、気分の晴れないオークション。 だが、何故か今日はいつもと何かが違った。 いつもなら目を向けるのも気の進まないステージ。 何故か今日はここから目が離せなかった。 少年少女達の中の一人が何故か目についたのだ。 その一人の子から目が離せない。 何も映してないような、希望も絶望もなさそうな、すべてを諦めているような目。 その瞳から目が離せない。 俺は無意識にその子の番号を口に出していた。 その瞬間、後悔した。 買い取る気もない子の番号を口に出してしまった。 ここに居るやつらを軽蔑しているのに、俺は今、ここに居るやつらと同じ事をあの子にしてしまった。 買い取ってもらえるかも、と、期待をさせたかもしれない・・・ でもその子は違った。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!